STD(性感染症)についてご存じですか?
~正しい理解でしっかり予防~
性感染症は性行為を通じて感染する病気のこと。かつて「性病」と呼ばれていたものに、クラミジアやエイズなどの感染症を加え、性感染症と呼ばれるようになりました。
英語では、Sexually Transmitted Diseasesの頭文字をとってSTDと呼ばれることもあります(STIと呼ばれることも)。
性感染症は、症状に気がつきにくいものが多くあるため、知らないうちに症状が進み、身体がむしばまれてしまっていることもあります。
福岡市中央区「荘田レディースクリニック」監修の「福岡産婦人科情報館」では、性感染症に関する正しい情報をお伝えすることで、できるだけ多くの方が性感染症から身を守る助けになればと考えています。
性感染症は、治療を行うと同時に予防策をしっかりとることが重要です。
性感染症(性病)の種類
クラミジア感染症
日本で一番感染者が多い性感染症だとされています。
症状を感じないために、感染に気が付かずパートナーにうつしてしまうことがあります。クラミジアに感染しているとHIVへの感染リスクが3~5倍になります。
女性の場合は、感染後1~2週間でおりものに黄色っぽいものが増え始めます。
放置すると不妊や流産の原因となるため、しっかり治療をしましょう。
淋菌感染症(淋病)
男性に多く、性風俗店でのオーラルセックス(フェラチオ)による感染が多いとされています。1回の性行為での感染率は約30%と非常に高く、クラミジア感染症と同時感染していることが多いのも特徴です。感染後2日~1週間で発症します。
男性の場合は尿道に膿が出たり激痛があったりとわかりやすい症状が現れますが、女性の場合は無症状の場合もあるため要注意です。
放置すると、不妊症や子宮外妊娠を引き起こしやすくなります。
梅毒
かつては不治の病とされ恐れられていましたが、治療薬ペニシリンの発見によって、現在は早期治療ができれば完治する病気です。梅毒にかかるとHIVの感染リスクが高まるので、万一のことを考えて、HIV検査も合わせて受けるようにしましょう。
女性の場合は、2~4週間で外陰部にただれやしこりが現れます。感染後2~3ヶ月で全身に発疹が出ることもあります。
B型肝炎
B型肝炎ウイルスは感染力が強く、セックスパートナーの数が多いほど感染者が多いとされています。感染後2~3ヶ月で食欲不振などの症状が現れます。
肝炎を発症すると、肝臓の細胞が破壊され、肝臓の働きが悪くなります。
急性肝炎として数ヶ月で治る場合もありますが、肝硬変や肝臓がんへと発展することがあるため注意が必要です。日本での感染は母子感染が大半だとされています。
C型肝炎
C型肝炎は、症状こそ軽い性感染症ですが、約7割の感染者が慢性化しており、肝硬変や肝臓がんに進行する可能性が高いと考えられています。ウイルスを持っているのに肝臓の障害に気づいていない人が多く、その数は約60万人ともいわれます。
感染後2週間~6ヶ月で、倦怠感や食欲不振、腹部不快感などが現れます。
HIV(エイズウイルス:ヒト免疫不全ウイルス)
後天性免疫不全症候群(AIDS)は、人の体液を介して感染する感染症です。
性行為による感染のほか、血液感染や母子感染でもうつる病気です。
感染後2~8週間は風邪に似た症状が現れますが、ほとんどのケースで目立った症状が現れません。半年から10数年という潜伏期間を経て、エイズを発症します。
エイズを発症すると、健康な人ならなんでもない細菌・ウイルスへの免疫力が低下し、さまざまな病気にかかりやすくなります。
性感染症にかかったかも?~対処法~
性感染症にかかっているという自覚や不安があるなら、できるだけ早く医療機関で診断を受けましょう。パートナーに感染している可能性が高いため、2人同時に検査や治療を受ける必要があります。男性は泌尿器科や性病科、女性は産婦人科や性病科の受診で検査・治療が受けられます。ブツブツやイボ状の腫れが見られ、皮膚科で感染が診断されるケースも少なくありません。
不安だけれど確信が持てなかったり、病院での検査・治療に抵抗があったりという場合は、自宅に検査キットを取り寄せ、匿名で検査を受けることもできます。
対応しているのは、クラミジア、淋病、HIVなどで、3,000~20,000円ほどで検査が受けられます。
検査結果はWEBサイト上で確認できます。
STD(性感染症)予防法
性感染症の予防にもっとも大切なことは、次の3点です。
セックスをしない | パートナーを限定する | コンドームを必ず使用する |
---|---|---|
感染しないためには、誰とも性行為をしないことが一番。しかしながら、実際の生活でこれを貫き通すのは難しいかもしれません | 感染してない者同士の性行為では感染の可能性がありません。お互いが検査を受けて感染していないことを確認できているなら安心です。 | STD予防にもっとも効果があるのが、避妊具としてのコンドームです。正しい使用方法でなくては感染リスクがあるため注意が必要です。 |
その他の予防法
STD予防には、常に細菌感染を疑って次のような点に注意しておくとよいでしょう。
性行為の前に……
シャワーや歯みがきで清潔に | 排便・排尿をすませておく | 相手の性器に異常がないか |
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人の皮膚・粘膜・性器には、性感染症の原因となるさまざまな病原菌が生息しています。あらかじめ病原菌を洗い流しておきましょう。 | 排便・排尿をすませ、肛門や局部周辺を清潔にしておきましょう。 | 相手の性器や、性器周辺にブツブツやイボ、赤い腫れ、膿などの性感染症の症状がないか確認しておきましょう。 |
セックスする時は……
体調が悪い時はしない | 生理中はしない | 不衛生なところでしない |
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疲れている時や病気で免疫力が低下している時は感染しやすくなります。 | 生理中の女性器はデリケートです。傷つきやすいため傷口からの感染可能性が高まります。 | 屋外や不衛生な場所でのセックスは、細菌やウイルス感染リスクが高まります。 |
酔っ払ってしない | 性器を傷つけない | |
酔った状態でのセックスでは判断力が低下し、正しい感染予防が行えないことが多くなります。 | 伸びた爪や器具を使用すると、性器や粘膜を傷つける原因となり、病原菌が侵入しやすくなるため要注意。 |
その他の注意点
カミソリ・歯ブラシ・タオルなどを共用しない | 感染の疑いがある場合は献血をしない | ちゃんと検査を受ける |
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血液や体液を感染することがあるため、カミソリ・歯ブラシ・タオルなどは同じものを共用しないようにしましょう。 | 輸血を受けた人への感染が広がるのを防止するためにも、STDの可能性がある人は献血を控えましょう。 | 自分自身の感染状態に不安があるなら、基本的なSTDに関する検査を受けるようにしましょう。特に不特定の人と性行為する機会が多い人は要注意。 |