中期中絶は、初期中絶手術とは時間もお金も、また精神的な苦痛も異なります。
ここでは、中期中絶で行われる流れやリスクなどを踏まえてご紹介します。
妊娠中期の中絶手術はいつまで受けれる?
中期の中絶手術、正式には人工中絶手術と呼ばれるものは、妊娠週数によって初期の中絶手術からはっきりと区別されています。
中期の中絶手術とは
妊娠中期に行われる人工中絶手術は、初期手術のように子宮内の胎児や胎盤を引っ張り出す処置ではなく、陣痛を起こし人工死産を起こすことで行われます。
中期の人工中絶ができる例は法律で決められており、母体の健康上あるいは経済上の理由で妊娠状態が困難な場合や、性犯罪などによる妊娠である場合に認められます。
また妊娠22週以上となると、中絶自体を受けられなくなるので、それ以降は出産をすることになります。
中期の人工中絶手術の時期
中期の人工中絶は、初期の中絶以降、つまり13週0日目から21週6日までの期間に行なうことができます。
この頃にはお腹の胎児がある程度育っており、エコーでも人の形として見えることがあります。
妊娠中期に人工死産を行った場合は、人工で陣痛を起こして出産するような形なので、役所でも死産届けを出し、火葬をする必要があります。
中期の手術に痛みはあるの?
妊娠中期になると、お腹の胎児は大きくなっているので、母体への負担も大きいものになります。
中期の人工中絶には激しい痛みが伴うことが多いので、心の準備をしておきましょう。
ラミナリアによる痛み
ラミナリアとは子宮口を広げるための棒状のもので、子宮口で体内の水分を吸い込んで膨らむことで、徐々に子宮口を広げるものです。
ラミナリアは初期の中絶手術でも使用されますが、中期の中絶手術では胎児を出産の形で産むので、事前によく広げておく必要があります。
しかし、子宮口は通常指一本分ほども開いてなく、無理に開けるので人によっては激痛を伴う場合もあります。
胎児の大きさにもよりますが、直径1cmになるラミナリアを10〜20本入れる場合もあります。
痛みはありますが、人工死産時のリスクを最低限に下げるためなので避けられない処置です。
陣痛による痛み
初期の中絶手術とは違い、中期の中絶手術では陣痛を起こして人工死産しないといけないので、麻酔をかけることができません。
陣痛誘発剤を投入してからは、出産と同じく陣痛が続くので、激しい痛みや出血を伴います。
また妊娠週数が大きくなるほど、陣痛による痛みや出産後のリスクも大きくなります。
精神的な苦痛
初期の中絶手術でももちろん精神的な苦痛はありますが、中期の人工中絶では、中絶にかかる時間も痛みも大きいので、さらに精神的な苦痛を背負いやすくなるようです。
また人工中絶後に行なう役所での手続きや火葬などもあり、決して一人では背負うことができません。
できればパートナーの方やご家族、ご友人などに支えてもらいましょう。
中期中絶で起こり得るリスク
中期の人工中絶では、手術中の痛みなどだけではなく、その後に続く疾患などのリスクも大きくなります。
いくつかリスクが大きい疾患などを挙げているので参考にしてください。
子宮内膜炎
子宮内膜炎は、人工死産後に子宮頚管が開いていることで、何らかの細菌が子宮内に侵入し、炎症を起こしてしまうことです。
人工死産による苦労で身体が疲れていることに加えて、子宮内に残留物がまだあるので、中期の中絶手術後は感染しやすい環境にあります。
子宮弛緩出血
妊娠中期には、胎児に栄養を送るため、子宮に送られる血液の量が多くなります。
子宮弛緩出血とは人工死産を行った際、子宮の収縮が弱いために胎盤の剥離した部分からの大量出血が止まらない疾患のことを指します。
子宮頸管裂傷
子宮頸管裂傷は、胎児が子宮頸部を通って生まれる過程で、子宮頚管を圧迫して切断してしまう疾患です。
通常の出産では、長い時間をかけて子宮口が徐々に開いていくのですが、中期の人工中絶の場合はラミナリアで人工的に子宮口を開くので、子宮頸管にダメージを受ける危険性が高くなります。
子宮破裂
子宮破裂はまれな例ではあるようですが、子宮破裂になると命にも関わることがあるので注意する必要があります。
突然の大量出血を伴い、素早い対処が必要となります。
不妊
中期の人工中絶は、正しく手術が行われれば身体的に不妊になることは少ないのですが、どちらかというと精神的な負担から不妊になってしまうケースがあるようです。
また、母体の方ではなくてパートナーの方が人工中絶への負担から不全になってしまうこともあります。
そのため、精神的なケアは周りの方とも一緒に行うのが重要です。
どんな方法で手術されるの?
時間や精神的な苦労も倍にかかる中期の人工中絶。人工中絶が完了するまでの過程を見ていきましょう。
病院探し
初期の中絶手術は産婦人科のある医療機関で比較的見つけやすいのですが、中期の人工中絶手術は認可を受けた母体保護法指定医師の元でしか行うことができません。
実は病院探しには非常に時間がかかるので、妊娠が発覚した時点で早めの病院探しが重要です。探している間に初期中絶期間、または中期の人工中絶期間が過ぎてしまったという例も多いようです。
事前検査とラミナリア挿入
事前に血液検査と血液凝固検査、心電図検査、尿検査などを行い、手術日を決めます。
その後、手術日の1〜2日前にはラミナリアを挿入して、子宮口を広げる準備をしておきます。
人工死産
手術当日には、陣痛誘発剤などを使って人工で陣痛を起こします。その際麻酔は使えません。
人工での死産が終わったら、子宮に残った胎盤などの内容物を除去していきます。
事後検査
初期の中絶では日帰り手術も多いようですが、中期の人工中絶では手術後数日は入院をして子宮の回復具合を見ることが多いようです。
この時期には出血や痛みもまだ続きますが、回復に大事な時期なのでゆっくりと身体を安静にしておきましょう。
届け出と火葬
前にも述べたように、中期の人工中絶の後は役所に死産届けを提出する必要があります。胎児は戸籍には残りません。
事前に棺桶などを用意しておき、人工死産した胎児を火葬します。
費用はどれくらいかかるの?
中期の人工中絶は、初期の中絶手術とは比べ物にならないほど大きな費用がかかり、一部の場合を除いて基本的には全額自己負担となります。
妊娠の週数によっても異なりますが、手術費用だけだと、中期中絶期間の最初の頃(12〜14週)は30万円ほど、後半(15〜21週)は40万円〜50万円前後はかかることがあります。
また保険が基本的には適用外なので、費用の設定は病院の自由です。病院によって費用設定が異なるので確認をしておくことをおすすめします。
中期の中絶手術についてのまとめ
中期の中絶手術は、思った以上に身体的・精神的苦労も、時間的・経済的苦労も大きいものになります。
できるだけ一人で抱え込んだり、手術の前後で無理な活動をしたりしないで、ゆっくりと回復していくことが重要です。