妊娠中絶は様々な方法があり、多くの情報が錯綜しています。中絶手術のなかでも非常に一般的な「吸引法」は比較的リスクが少なく多くの病院で行われている方法で、中絶を考える際にしっかりとその内容を理解しておくことが大切な手術方法です。
1吸引法とは
妊娠中絶の一般的な方法は「掻爬法」という方法と「吸引法」という方法です。このなかでも現在一般的に行われている方法が「吸引法」です。
吸引法は子宮の内部の胎嚢や胎児を細い管を使って吸い出す方法で、非常に短時間で手術が終わることから母体への負担も短く、確実に手術を終えることができる方法として知られています。
掻爬法のように手を使って子宮の内部の胎児を取り出す方法よりも取り残しが少ないことから頻繁に行われている方法で、現在の妊娠初期中絶手術の第1選択しとしてあげられる手術法です。
2吸引法の手術手順
吸引法の手術手順は手術の前日から始まります。
前処置
手術前には前処置という処置を行います。子宮の入り口は普段小さく閉じられていて、経血や粘液などの液体だけが通るようになっています。この子宮の入り口の穴にラミナリアという海藻の茎でできた細い棒を入れ、子宮の入り口を徐々に広げる処置を行います。手術の前にゆっくりと子宮の入り口を広げることで子宮の内部にアクセスしやすくなります。
麻酔
手術の前には麻酔を行い、意識を失った状態で手術ができるようにします。麻酔法はガスによる麻酔と静脈内部に鎮静剤を入れて行う麻酔を組み合わせた麻酔を行うことが一般的で、眠ったまま治療を受けることができます。麻酔には肝臓の機能や呼吸の機能が非常に重要な要素となるので、術前に血液検査を行い、健康状態についてよく把握してから治療を行います。
手術
手術は麻酔後にまずラミナリアの除去から始まります。膣を広げてラミナリアを除去し、広がった子宮の入り口にさらに子宮を広げる処置を施します。この後に吸引器が付いたスプーンのような器具を使って胎児と胎嚢などの付属器を除去します。
この時に出血が起こりますが出血はやがて収まります。子宮の内部は見えないので、手術自体は手探りで行うことになり、必要に応じて超音波を使って子宮の内部を確認していきます。
麻酔からの回復
手術が終了した後には麻酔から醒ますために回復時間を設けます。この間に人によっては吐き気を感じたり、めまいを感じることもあるので、病院でゆっくりと回復時間をとることが重要です。
術後の検診
術後の回復に重要なのは術後の検診です。術後に健康な状態に回復しているかどうか確認するのは非常に大切で、術後1週間ほどしたら子宮の状態を把握する検査を受けます。
この時に大きな問題がなければ治療が一通り終わります。
3吸引法で起こりうるトラブル
吸引法を行った後に起こりうるトラブルは以下のようなトラブルがあります。
細菌感染
子宮の内部に細菌が入り込むことで起こるのが細菌感染です。発熱や倦怠感、腹部の痛みやおりものの出血などが知られていて、万が一免疫状態が悪かったり、薬で治療が難しいタイプの細菌が入り込んだ場合には敗血症などの全身への影響が懸念されます。このため、子宮への感染が起こらないように術後から抗菌薬を服用することが一般的で、しっかりと薬を使用することで無用な感染を防ぐ必要があるのです。
子宮へのダメージ
子宮へのダメージは子宮の筋肉にまで誤って傷をつけてしまった場合に起こります。この場合には出血がひどくなったり、腹痛が非常に長く続くので、体の状態に異変を感じることがあります。治癒に時間は掛かりますが、時間をかければしっかりと治るので、不安な場合には医師と相談をしましょう。
小腸へのダメージ
もっとも深刻な障害は子宮から器具が飛び出してしまい、小腸を傷つけてしまった場合です。この場合には小腸の内部の細菌がお腹の中にばらまかれてしまうので、腹膜炎などの深刻な炎症が起こります。緊急手術が必要になることもあるので、術後の検診で子宮に問題がないことを確認する必要があります。
取り残し
ごく稀にですが、取り残しを作ってしまうことがあります。取り残しがあると術後に子宮胎嚢などが残ってしまい、再度手術を行う必要が出てくるので注意が必要です。
これらのトラブルは医師の指示に従って服薬や検査を受けていれば未然に防ぐことができます。検査を怠らないように心がけましょう。
4吸引法の費用や痛みは?
吸引手術の痛みは麻酔によってほとんど感じません。人によっては前処置の時に痛みを感じたり術後に重い生理痛のような痛みを感じることもあるのですが、非常に個人差が大きいため、一概にいうことはできません。
費用は保険適応がないので、病院によって異なっていますが、15万円〜20万円の間程度の費用がかかることが一般的です。術前に病院に問い合わせると正確な金額を調べることができるので、確認してみましょう。